【日々雑感】中小企業診断士の付加価値向上と単価向上への考察


2017年06月20日 (火)

中小企業診断士の価格についてのお話し

弊社は、法人営業やB2Bマーケティング、新規事業開発のセミナーや研修・ワークショップの受託が中心ですが、小倉個人としては中小企業診断士 小倉正嗣事務所として中小企業の支援をしています。
今日はその、中小企業診断士としてのお話。

先日、あるところで、値引きをしない・タダで仕事をしない事による中小診断士の価値向上の重要性について発信したのです。診断士としては若干タブー視される領域ですからね、結構反響がありましたよ。だから続編として、「ではどうすれば値引きをせずにしっかりと価値に応じたギャラを頂けるの ?」という内容について書いてみたいと思ったのです。問題提起だけして、解が無いとカッコ悪いですからね。僕なりの考え方ですけど記してみます。

ちなみに、中小企業診断士以外の人の為にちょっと補足します。まず最初に、中小企業診断士が経営コンサルタントの国家資格であることや、試験の難易度なんかはウィキペディアとかで調べてください。
その中小企業診断士の仕事、公共性の高い仕事と民間の仕事の2種類があります。どちらを中心に仕事をするかは人によってまちまちなんだけど、いずれにせよ診断士プライスと言って、実は診断士を持っていると受注単価が下がる傾向がある。これは、診断士に限定される仕事のニーズが少なく、需要と供給のバランスが悪いことに起因するのだろうな。特に都市圏では診断士が飽和していて、経営コンサルタントという知的生産性の高そうな仕事のわりに、正当な金額で仕事が流通していないという問題があるのです。要するに、診断士=低額で事務仕事をやってくれる人たちと思われている可能性があると僕は考えています。

でも、人気資格ランキングではいつもトップクラスにいるにはいるんです。その割には「足の裏の米粒」(取っても食えないけど取らないと気持ち悪い)などと言われる。だから、取っても独立する人が3割程度なのです。

そこそこ難しい資格で、人気はあるんだけど、食えない、すなわち需要が少ない、だからダンピングが起こっているという状態が、当文章の背景です。

で、「ではどうすれば値引きをせずにしっかりと価値に応じたギャラを頂けるの ?」という点に。

絞り込みが大事

やはり、まずは、一つか二つ程度に専門性を絞り込むことが最初。出来れば、業種と職域の双方を絞り込んで専門性として謳えるとベスト。建設業の工程管理なり、卸売業のマーケティングなり、いろんな切り口が考えられますね。絞るためのヒントはこれまでのビジネス人生の中にあるのです。いや、もっと言うとビジネス人生の中にしか無い。

診断士試験は経営に関してゼネラルに幅広い勉強をするから、とりあえず経営全般なんでも出来る気になってしまうところが難点です。ダメですよ、経験のない分野まで幅広く出来ます!って言っては。やったことのないのに新規事業とか、独立したことないのに起業支援とかを語っては。人生で本気になって体験した領域以外の内容は、薄っぺらいもんです。「なんでも出来ます」は「何も本気にやってきたものはありません」と宣言している様なもの。

やっぱり自分がビジネスマンとして死に物狂いで努力した領域でしか、コンサルとして、講師としては勝負にならないですよ。耳学問になんてリアリティが無いのです。

だから、専門領域をとがらせ、それ以外は断る勇気を持つ。これこそが、専門性を際立たせる為に絶対必要なんです。

そして、その上で「売りモノ」を作るんだろうな〜。自分を売るじゃなくて、モノを売るんです。要するにコンテンツパッケージですよ。そいつを売るわけです。自分がスゴイですっていう営業は、下手するとただの自慢ですからね。僕が作ったこいつ(モノ)がスゴイんですという形に変えないと、営業もプロモーションもしにくいんです。

自分の経験・キャリア×学問、二つを掛け合わせて誰にも負けない自分だけのオリジナルコンテンツである売りモノを、やっぱり死に物狂いで作るわけです。自分のビジネス人生全てをつぎ込んだキラーコンテンツを作らないといけません。

「ビジネス人生にたいしたことしてないのでどうしましょう?」

そりゃダメですよ。どっかのタイミングで必死でビジネスやってこないとダメです。人にものを教え、指導・支援する仕事ですよ。必死でビジネスをやっていない、たかだか数年で取れる資格持っているだけの人に指導されたいですか?僕は死んでも嫌だ。もしその経験がないなら今からでも立ち戻ってやるべきです。

かといって経験、キャリアだけでもいけない。しっかりした学問的な裏付けがないコンテンツは、正当性と再現性が客観的に判断出来ないからです。しっかりと情報と知識を、時代に合わせた形でアップデートし続けないといけない。

 

では、診断士はどこで使うの?

診断士は足切りを超える道具くらいの価値と思っておけば良いのではないかなぁ。国家資格を持っていると、どこに行っても門前払いということは少なくなる。それで十分の価値です。

自分の作り上げたコンテンツの正統性のささやかな根拠くらいと考えておくのが一番じゃないですか。それぐらいが変に資格に寄っかからなくて健全です。占有業務がないんですよ、必要以上に寄っかかっちゃダメですよ。

診断士ありきで仕事をすると、診断士なら誰でも良い単価の低い仕事で時間が埋まってしまい、コンテンツを作ったり(売りモノ作り)、プロモをしたり(マーケティング)することができなくなってしまいジリ貧になりますよ。
だから診断士ありきではなく、自分自身のコンテンツありきで、あくまでオマケの診断士です。信頼とリテラシーの最低基準値クリアの証明書程度で。

そうでないと価値も価格も上がらない。
だから、診断士なら誰でもいい仕事はやらない。自分にしかできない専門性の高い仕事だけやる。

でもね、診断士を持っていないコンサルタントは、「信頼とリテラシーの最低基準値クリアの証明書」を手にするのが本当に大変なんです。だから、たかだかその程度の価値?と考えないで、ドアオープナーとしては最大限使うべきです。そして、ドアがオープンになったら自分自身のコンテンツで勝負です。

オリジナルのコンテンツができて初めて営業開始になります。本を書くなり、Webでプロモするなり、ホワイトペーパーにしてDMを打つなり、飛び込み営業するのもやり易いでしょう。
診断士の仕事を探すのではなく、自分の売りモノを創り出して、それを認知してもらい、売る。そしてそれを売るのが、信頼できる国家資格保持者の私、という構造で考えることをお勧めします。

診断士のあるべき時間の使い方

以前ある先輩コンサルと話をした時に教えてもらった考え方がとても参考になって、今でも行動の指針になっているので、ここに記しておきます。

コンサルタントは時間を4等分にわけて、それぞれ、コンサルなり講師なりの仕事の実行の時間が1/4、コンサルタントとしての勉強の時間が1/4 、コンテンツ制作の時間が1/4 、そして営業・マーケティング活動の時間が1/4 として運用する必要がある。どれかに極端に偏ってはいけない。

4-quadrantLogic

なるほど、確かになぁと感銘をうけたきおくがあります。仕事ばかりしていてアップデートが無いと、コンテンツが陳腐化していくし、コンテンツ作っても売る努力が無いと知られないままになってしまう。確かに4つのバランスは大事とても大事。

僕は中小企業診断士であることに誇りをもって仕事をしています。公共性の高い仕事、特に事業再生などの、お金が無くて困っている人のいる仕事についてはギャラは度外視でやることもあります。これは国家資格保持者としての義務という側面があるからです。

「お願いします」と頼まれて、お役に立てる領域ならば、その時にはやろう。その時には、是非いつもの「売りモノ」の宣伝は忘れなきよう。今回は特別ですよという意味を込めて。

一方で、診断士を持っていない講師やコンサルタントには高い予算をつけて、診断士には公共プライスで安い予算しかつけないという考え方には断固として反対します。ただ、そこには公共プライスを上げるための努力が診断士全体として行われないといけない。正当なギャラのない付加価値の低い仕事は断らないといけない。そうしないと、いつまでたっても「職業としての」中小企業診断士の価値は上がらない。

だから、僕は、常に4つの象限を意識して、特にお金を生み出している時間以外の3象限(学習・制作・営業)を増やすようにしています。そうでないと、専門的な分野の高付加価値な専門家と認識してもらえないでしょう。

診断士最強説

僕は、あちこちで公言しています。中小企業診断士こそが最強の資格であると。

確かに、国家から与えられた占有業務が無いから、弁護士や税理士などの様に資格そのもので食べていくことはかなり難しい。それは仕方ないです。そこまで難しい資格じゃないからね。だけど、実業のビジネスマンとして地に足をつけて仕事をしながら、勉強をして取ることが可能な資格としてはどうだろう?

弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など診断士にレベルが上位する資格は、その資格を目的と手段にした人生を送ることが基本でしょう。多くの人が学生時代から取り組むか、関連した事務所での勤務をしながら資格を受ける。そうじゃないと取れないくらい難しいし根気も必要。でも診断士はギリギリビジネスをちゃんとやり、企業人として主体的に高度な経験をしつつ、資格を取ることが出来ます。大変だけどね。

中小企業診断士は、「ビジネスの経験」と「資格」の掛け算が大前提なんです。その掛け算に価値があるという特殊な資格。ビジネスの経験で専門性を作り上げ、資格で信頼の裏付けをする。とは言えビジネスはやっぱり真剣なビジネスの世界で仕事をしていないとダメですよ。少なくとも自分自信の尺度でもいいので必死でビジネスの世界で仕事をしたと胸を張れる取り組みじゃないと。それでこそ、他の資格者からも経営者からも評価を頂けるというものです。

そうなると、何をするにも自由。だって占有業務が無いから固定観念に縛られる必要が無いんだもの。国家資格の信頼とビジネスの経験にレバレッジをかけたら、なんだって出来る。誰にだって会える。そう考えると下手に占有業務なんて無いほうがいい気がしてしょうがない。

僕は、「信頼」のある「自由」こそ手にできる最高の価値だと思う。だから診断士は最強。間違いない。

もう一度言おう、ビジネスの経験と資格での学習で、自分だけの価値を作り出し、それを欲しいと言ってくれる人にのみしっかりとデリバリーする。それ以外の仕事は、義務としての業務以外は丁重にお断りする。診断士という資格に寄っかかった、誰でもいい仕事はあくまでもコンテンツが出来るまでのつなぎ。最悪でも1年程度で卒業し、専門かつ高付加価値の仕事にのみまい進する。

全診断士が、こんな感じで自由を謳歌できれば、自ずと診断士の価値と単価は上がっていくのではないかな。そして、世の中の経営者・ビジネスマンの本当の意味で役に立てる存在になれるのではないかなと思う。

心の底から診断士を愛し、診断士に誇りを持つからこそ、「診断士は安易に値引きをしない」と提言したいのです。値引きをし、誰でもできる仕事に群がるくらいなら、「武士は食わねど高楊枝」でも構わない。1ミリでもクライアントへの付加価値を上げるためのコンテンツ開発の努力をし、そしてそのコンテンツを知ってもらうためのブランディング活動をするべきだと考えているのです。

以上、僕を含めた診断士業界全般の向かうべき方向への、僕なりの提言でした。

 

神奈川県中小企業診断協会 登録研究会 かながわコンテンツ創造研究所

所長 小倉 正嗣