【第29講座】「ブルーシールアイスクリーム」のブランド戦略


2014年05月06日 (火)

先日「トップリーブ沖縄」という、沖縄の企業向けの研修の講師のため8年ぶりに沖縄の地を踏んだ。

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沖縄という土地の持つ魅力は変わっておらず、空港に降り立った瞬間から、なんとなく「非日常的」な高揚感に満たされる。多分にイメージ的な要素もあるのだろうが、不思議な魅力を持つ土地だと8年前と変わらない感想を持つに至った。本州のどこに旅行をした時にも感じない独特の感覚だ。

 

沖縄県産業支援センターの会場で2日間に渡り

「実践交渉術」
「ロジカルシンキング」
「提案営業力」

の講義を提供させて頂いた。

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【かりゆし、いいですね~】

 

いつもの如く、オグラ節全開で講義をしたつもりではあるが、前述の通りほんのりリゾートモードだったかもしれない。
が、定期的に呼んで頂けるように一生懸命講義をしたつもりではある。
結果として、中々にお客様の評価は良かったらしく、今後も半期に一度くらいは呼んでもらえそうだ。実に嬉しい。

 

さて、その講義の場に、沖縄に一度でも行ったことのある方ならばほぼ知っている商品、ブルーシールアイスクリームの製造元であるフォーモストブルーシール株式会社の社員の方が数名参加して下さっていて、実に興味深いコミュニケーションを取ることができた。

その際に伺ったトピックがマーケティング的に実に興味深い研究対象なので、ブルーシールの出店戦略について少し想いを馳せてみたい。

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【羽田空港店】

 

現在の社長は、沖縄の地域に根ざした出店戦略を採用しているとのことなのだが、2011年頃に交代した前社長はフランチャイズを基軸として拡大戦略を取っていた模様である。その名残なのか、北海道から九州まで、それなりに分散してFC(フランチャイズ)店舗や取扱店が存在している。沿革を見る限りだと、2011年の和歌山店がFC店の最後の出店のようだ。

店舗一覧

果たしてどちらの戦略が正しいのだろうか?今日の論点はここに置きたい。
もちろん、どちらの戦略が正しいかは双方をやってみないとわからないので、ここではあくまでも私的見解ということを断っておく。

 

最初に結論を申し上げると、FC展開はあまり積極的に展開せずに、直営に重点を置いて大切にブランドコントロールをして欲しいと思っている。何故なら、ブルーシールアイスクリームの最大の資産が、ブランド価値だと考えているからだ。FCだとどうしてもブランド価値のコントロールが末端まで効きにくい。

私は、通常行う営業やマーケティングの講義の中で、『モノコト変換』思考というコンテンツを中心に据えている。「コト」と言うのは、マーケティング用語で言うと便益とか、CVP(カスタマーバリュープロポジション)などと言われる、いわゆる商品の持っている価値のことだが、私はシンプルに「コト」と表現している。

 

例として、一般的なアイスクリームを『モノコト変換』してみよう。
「モノ」としてのアイスクリームを手に入れる人が欲しい「コト」は、『甘さ・冷たさから派生する快感』である。むろん栄養摂取や一緒に着座する人との楽しい時間という「コト」でも構わないと思う。要するに、人は「モノ」を欲しがるのではなくて「コト」を欲していると言うこと。その「コト」に埋め込まれたストーリーを買うのだ。

 

さて、前置きが長くなった。
そこでブルーシールアイスクリームを「モノコト」変換してみたい。もちろん売っている商品はアイスクリームだから『甘さ・冷たさから派生する快感』は一般のアイスクリームと同様だが、沖縄に旅行で来る顧客がブルーシールアイスクリームに求めているのは単にそれだけではない。日常から離れ、沖縄にやってきた喜びに派生する『非日常感』であるように思う。

したがって、サーティーワンアイスクリームのように、あちこちに店舗を構える戦略を取るのには何となく違和感を感じる。出来れば、テーマを『非日常感のある喜び』に絞って、出店戦略やブランド管理をして頂きたいと切に思う。

 

私のように、たまにしか沖縄に行かない人間でも、ブルーシールアイスクリームのことは沖縄ブランドとして想起できる。そして、想起した時には何となく嬉々とした気持ちと高揚感に満たされているのだ。この感覚がブルーシールアイスクリームのブランドが提供している「価値」であり「コト」である。その「コト」にマッチした戦略を一貫して取ることで、高利益体質が生み出せるのではないだろうか。非日常の価値には比較的財布の紐が緩くなるのが人間の性なのだから。

 

現在創業66年とのこと。ブランドを安売りせず、是非100年企業を目指して頂きたい。