【第34講座】法人営業の戦略設計図の描き方-第3回「提案シナリオの作成の極意」


2017年05月03日 (水)

 『提案シナリオ作成の王道を把握していますか』

これまで2度にわたり、市場と顧客について情報を収集し分析を行う方法から、攻略の為の戦略と戦術を立てる方法までをお伝えしてきました。今回からは、自社側に目を向け、顧客に対してどのように商品やビジネススキームなどを伝えるのかと言うアプローチで戦略設計図を描いていきます。

お客様の環境変化からシナリオを作る

提案シナリオに最も大切な要素は、顧客を取り巻く環境変化、すなわち顧客の立場からスタートすることです。間違っても、自社の商品ありきで提案をしない様に気をつけましょう。前回の記事で、顧客は環境変化に対応することを目的として、内部の経営資源を強化する為の商品を購買すると述べました。従って提案シナリオも、顧客の環境変化に仮説を立て、その対応のための内部経営資源の強化こそが顧客の課題であり、課題解決方法が弊社との取引という順番で伝えることが重要です。

自社の提案にモノコト変換を活用

自社を語るに際して有効な手法が、モノコト変換です。これは、顧客が購入するのはモノではなくコト(経験・利便性等の顧客価値)であるとした、1960年代のハーバード大学、T・レビット教授の考え方を、営業提案に活用するというアプローチです。まず自社の商品やビジネススキーム(モノ)が、顧客に対してどのような価値(コト)を提供しているかという視点で思考します。そしてその顧客価値(コト)こそが、顧客の内部資源の強化の方法であり、その入手が顧客の課題であるという順序でシナリオを思考します。(図1)その上で、顧客の環境変化への対応の為の内部資源の強化という経営課題が、弊社の提供するコト(顧客価値)の入手であるという順序に変換して伝えるのです。

〈図1:思考の順序と伝える順序〉

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そして、その次に必要なのは、価値(コト)の実現を可能とする自社の強みの伝え方になります。

強みの最適な伝え方をマスターする

自社の強みを語るに際して、まず強みの抽出を行って下さい。品質・コスト構造・デリバリー・技術開発力・組織力・資本力など、商品に付帯する企業としての強みを最大3つ程度抽出してみましょう。
強みを抽出できた段階で、以下の3つの問いに回答してみて下さい。
①どのような事実や実績から、強みを選択したのか?
②その事実や実績は、何故実現できたのか?
③競合他社ではなく、自社だから実現できた理由は何か?
これら3つの問いへの答えがそのまま強みシナリオの骨子になります。最初に①で事実や実績で強みの根拠を作ります。特に、政府機関や大企業での採用実績や、学問的な権威などを利用して、様々な「後光」を作り出すとより効果的でしょう。そして、②でそれが可能となった理由を、「何故ならば」と理論的に裏付けることで納得感を演出します。
最後に③の競合優位性を埋め込むことを意識して下さい。その際、必ず直接の競合他社や業界平均、あるいは過去の自社と比較して、相対的に優位であることをしっかりと証明し伝えましょう。顧客価値⇒実績(後光)⇒理論的裏付け⇒相対優位性の順番で伝えることが最も有効な順序です。
このように、顧客の環境変化⇒顧客の内部資源強化の必要性⇒その為に入手すべき価値(コト)⇒それこそが弊社の商品やビジネススキーム(モノ)⇒信頼に足る実績や事実⇒それが可能な理由⇒相対的な競合優位性、という順番でシナリオを準備することが提案の極意なのです。

 

【本記事はSBIビジネス・ソリューションズ社が発行する機関誌「会社の知恵袋」2016年12月-2017年3月の代表小倉の連載記事に加筆修正を行った内容です。】