【第9講座】【連載コラム】新規事業に失敗しないために ⑤【後継経営者が取り組む新規事業】


2013年08月29日 (木)

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②後継経営者の企業における新規事業の立ち上げの場合

後継経営者が新規事業を担当するのは、主に中小企業の事が多いだろう。もちろん大企業でも考えられなくはないが、後継経営者という言葉が少しそぐわない為、ここでは中堅・中小企業を取り上げて考えてみたい。

 

この場合、現経営者が、後継者(主に経営者の子息)を、どのように指導育成をし、今後会社を引き継ぐかという点を如何に真剣に考えているかで随分と結果が異なる。

一番ベストな引き継ぎ方としては、後継経営者が他の企業で一定期間の修行の後、そこでのノウハウを持って家業である企業に新規事業を持ち込んで、収益の大きな柱にし、その上で現業の引き継ぎに入ると言う形ではないだろうか。

 

後継経営者の場合、最も大きな事業承継の障壁は、現社長ならびに現社長の番頭さんとなじみ客であると言われている。どのように振舞っても現社長との比較をまぬがれることは出来ない。番頭さんも、後継経営者を常に子供扱いするところからスタートするだろうし、社長の属人的な要素で成り立っている業態の場合は、なじみ客もうるさい。

 

そのような現実を打破する為に、新規事業を立ち上げ、軌道に乗せたという実績を作ってからの本業承継が最も美しい形だ。

 

そこで問題になるのが、後継経営者にその実力があるか?ということである。

 

中小企業経営者は、会社の金回りに問題がない場合、そのご子息を甘やかして育てるというケースが散見される。いわゆるお坊ちゃん・お嬢ちゃん学校に入学させ、コネで就職を決めてあげるというレールを用意して、ご子息の人生における数々の障害をあらかじめ取り除いてあげてしまう。そのような状況下で育った後継者が、極めて成功確率の低い新規事業開発に成功するかどうか?という一点のみが最も美しい事業承継への強い懸念事項である。

 

誤解なきように申し上げておきたいが、私の周りには極めて優秀な後継経営者も多い。現業を上手く引き継いだ上に、新たな事業に果敢に挑戦し成功に結びつけている。世の中こういった事業承継者ばかりであるならば、事業承継問題が中小企業経営論におけるメイントピックになどならないのではあるが。

残念ながら、人生における障害を乗り越えた経験が相対的に少ない人物が、経営資源に劣る中小企業において、果敢に新たなチャレンジを行い成功させるということは極めて難しいと言わざるを得ないだろう。

 

できれば他の企業での修行期間中に、1度や2度の新規事業開発の経験を積み、プロジェクトマネジメントや事業計画書作成のノウハウ、マネジメントのあり方などを学んび、何よりもチャレンジ精神や折れないココロなどを手に入れた上で、家業に入るというプロセスを経て頂きたいものである。

そうすれば、事業承継の際にも、父親である社長や番頭さんに自分の存在を認めさせてスムーズな承継が出来る上に、家業にも新たな収益の柱ができるという2重に美味しい効果が見込めるはずだ。

 

少なくとも、何もバックグラウンドを持たずにチャレンジする起業家に比べ、大企業と比しては乏しいとは言え、一定の経営資源を持ってビジネスを行える後継経営者には、是非日本の中小企業の活性化のために果敢なチャレンジをしていただきたいものである。