【第10講座】【スポットコラム】「営業現場力」へのアプローチ


2013年08月31日 (土)

6月より取り組んできた営業現場力研修がラップアップ致しました。本日は、その営業現場力研修において扱ってきた「営業現場力」についてアプローチをしていきたいと考えています。

 

足掛け3ヶ月かけて取り組んできた現場力というキーワード、ものづくりの世界の現場力という意味では、コンサルティングファームのローランド・ベルガー、遠藤功会長の「現場力を鍛える」をはじめとした現場力シリーズが特に有名です。当然のことながら全てに目を通させて頂きました。

 

 

極めて大胆に一言で遠藤先生の書かれている「現場力」を表すと「現場の自律的な活動力」と表すことができるでしょうか。セクショナリズム、すなわち他部署に対しての無視・敵視・無関心を自らの自律心で排除し、オペレーショナル・エクセレンスを実現する組織のことを現場力の強い組織と定義されています。

 

では、営業の現場力はそのまま「現場の自律的な活動力」と捉える事ができるでしょうか?私はそれは違うと考えています。営業における現場は、製造のそれとは異なり、やはりお客様との接点が現場であると捉えるべきです。社内のインターナルなオペレーショナル・エクセレンスでは無いということです。

当然営業という職業も、主にコールセンターやマーケティング・物流などの他部署と切っても切れない関係ではあります。しかしながら商品やサービスを提供するオペレーション内部には入り込まないため、あくまでもお客様を起点として自社内との間での情報の潤滑な流通を行う力が「現場力」なのだと考えるのが自然という認識です。

 

マーケティングや商品企画・開発、営業という職業は、未来を作り出していかなければなりません。そしてその中でも特に営業は、お客様という不確実な存在とリアルタイムで相手をしなければならない職業です。そういった未来やお客様といった不確実な物事に相対するに際して必要な考え方が、先のコラムに書いた仮説思考になります。営業職は、お客様ニーズに対しての仮説を現場でリアルタイムにお客様とコミュニケーションすることで実行・検証出来る、最も仮説立案⇒実行⇒検証サイクルに適した職業なのです。

逆に言うならば、経験とロジックで良い仮説を立てられない営業は、残念ながらお客様ニーズに深くリーチできないとも言えるでしょう。

 

このような認識のもと、以下の3つのテーマに分けて営業の現場力を定義し講義を行ってまいりました。

①    発信力の強化  (自社の強み抽出とプレゼンテーションシナリオ作成)

②    情報収集力の強化 (情報の入手法と情報からの仮説立案)

③    情報共有力の強化 (会議等による情報の共有・流通)

 

様々な論理の伝達と、事例研究、ディスカッション、プレゼンテーションの模擬訓練の中で、強い「営業現場力」へのアプローチが出来たのではないかと考えています。

 

インターネットによる情報流通革命の結果として、営業不要論は根強く喧伝されています。確かに、御用聞き営業や商品知識の回答のみの物知り営業はインターネットに完全に置き換わってしまうのはもはや時間の問題でしょう。用事があればそれに適した専門家を探すのに5分とかからないでしょうし、商品の仕様は品番をGoogleで叩けば瞬時に入手可能です。利用マニュアルは全てインターネッに掲載されていますし、価格の比較は一瞬でされてしまいます。

 

そういった環境の中、営業という存在が付加価値を生み出し続ける為には、確かに現場力というキーワードへのフォーカスが必要になります。

現場でしかわからない情報を、現場から社内へ持ち込めるのは、やはり現場で行動している営業マンに他ならないからです。そして、お客様の気づいていない小さな困りごとにリーチ出来るのも営業マンならではのファンクションなのです。

 

営業マンは、社内の誰よりも現場に詳しいということにプライドをもって業務に取り組めるよう、常に情報に対しての感度を高く持ち、常に新たな知識を拡充し、常に新たな仮説を立て続けることによって、インターネットではリーチ出来ない現場の肌感覚のようなものに対して敏感でいられるように自らを律する必要があります。

 

それによってのみ、最前線の戦力として機能し続けることが出来るのではないでしょうか?

営業企画コンサルタント 小倉正嗣