【第13講座】【連載コラム】新規事業に失敗しないために ⑥【サラリーマン社長の場合】


2013年09月07日 (土)

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③  サラリーマン社長の場合(一定期間で人事異動が発生する企業の場合)

日本の多くの大企業がそうであるように、サラリーマン社長の場合には社長の任期というものがある。もちろんそういった会社の場合には役員以上は任期が決まっており、3年・4年というスパンで人が変わっていくのが通常であるといえる。

 

新規事業の規模にもよるが、多くの場合新規事業の投資意思決定は社長・あるいは役員の決裁となるケースが殆んどだろう。旗を振るのが部長格であったとしても、そこでの決裁で全てが進められるというケースはそう多くはないはずだ。

何が言いたいかというと、オーナー企業でない場合は、3年以内程度に潰されないだけの規模に事業を持っていかないとならないということである。

 

少なくとも、他人が作り出した新規事業に対しては、余程の可能性が見込まれない限り思い入れをもって接することは難しい。自分が得た新たなポジションで、自分の実績を作るためには他人の手垢のついた事業にかまけている暇はない、というのが一般的な人間の心情だろう。特に、既にIRやマスコミ発表などが終わっている案件においては、その事業に対してのモチベーションが上がらないのは当然だろう。既に手柄は前任者のものであり、懸命に取り組んでも自分自身が大きく日の目を見ることはないのだから。ここに任期制で役員が変わる組織の限界がある。

 

したがって、繰り返しになるが3年をめどに、収益の出ることが仮説検証されている状態にもっていけないようであるならば、停止や縮小の憂き目に合うことは覚悟をして取り組まなければならない。社を上げた大きな新規事業の場合、論理的に考えたら、準備から含めて立ち上がるのに5年以上かかるということもそう少なくはない。設備やシステムの投資を伴う場合、投資回収まで含めて5年以上というのは普通に考えられる構図ではある。しかし、私は3年で小さく投資回収が出来る範囲で始め、投資回収ができたら次の機能拡張を進めていくという多段階発射で新規事業を行うことを薦めている。小さく始めて大きく育てるという考え方が、任期制で人事異動がある企業の進むべき新規事業の形である。

 

事業責任者となった方のサポートを承る存在としては、上記の理由で新規事業が潰されるのは身につまされる思いがある。なぜならば、私自身が新規事業の立ち上げを行ってきた中で感じてきた忸怩たる思いがあるからだ。

初志貫徹し、事業を大きな企業の柱としていくためにも、夢々この点は忘れないで頂きたいと思う次第である。