【第17講座】ビジネスにおける行動力格差(後編)
2013年09月19日 (木)
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BtoB領域の営業活動において、果たして1990年代に逆戻りして知識力格差を利用した活動でうまくいくものでしょうか?答えは完全に否でしょう。
BtoCと異なり、BtoBの世界は相手もプロです。プロを相手に既に流通している知識をいくら溜め込んだところで、元々相手も知っている情報か、知らなくてもインターネットで調べればすぐに既知の情報になってしまいます。
では、どうすれば営業としての価値を出していけるか、その答えはお客様の問題解決の為の様々な知識の組み合わせの最適解を、「状況」に応じて「瞬時」に考えだす『仮説力』の部分の強化です。
すなわち、『仮説力格差』とでも言える能力が、BtoBにおける営業活動の明暗を分ける要素となります。
言い換えると、お客様の問題解決を「こうしたら実現するのではないか?」という最も確からしい解を、商談のその場で自社商品と絡めて、説得力を持ってお客様に話のできる対応力が求められるのです。これは中々ハードルが高い。とはいえ、これが出来ない営業に存在理由はありません。会社から渡された説明資料による単なる商品やサービスの説明は、「御社のホームページに載っていますよね」で一蹴されてしまうからです。
では『仮説力』を鍛えるためにどうしたら良いのか?
それには3ステップあります。
1, ビジネスパーソンとして『仮説』を立てるのに必要な知識を持っていること。
BtoBの場合は顧客もビジネスパーソンですから、顧客の問題を解決する手立てを、顧客を上回って構築しなければならないことを考えると生半可な知識ではいけません。知識力格差の時代は確かに終わっていますが、インターネットで調べてわかる知識と、実際の問題解決のために頭の中で自由に組み合わせることのできる知識では質が異なります。いわゆるビジネスの基礎体力となるファイナンスやマーケティング、基礎的なフレームワークは当り前のように使いこなせるレベルにまで精通している必要があります。購買担当者の方が使いこなせる知識の幅が広い場合、立てられる『仮説』の矮小さを指摘され一蹴されることでしょう。
2, 知識を元に顧客の問題解決となる『仮説』を妄想することを習慣とすること。
新聞の記事でも雑誌の記事でもなんでも構いません。現在起こっている事実が将来どうなっていくのかを妄想することです。その際に忘れてはならないことは、その妄想に対して「なぜならば」という自らが考えた確からしい理由を考えておくということです。妄想を『仮説』にまで昇華させるのには、データを集めたり実際にヒアリングをするなどのプロセスを経る必要があるので『仮説』を立てる事はできませんが、妄想をするだけならばタダでいくらでも出来ます。この思考訓練が、営業活動を高度化させるのです。
もちろん、様々な顧客を訪問する前に、困り事とその解決方法を妄想することを忘れずに。可能であれば、その妄想を上司や同僚に聞いてもらうことができればベストでしょう。
3, 立てた妄想を持って出来る限り数多くの商談をこなすこと
数多くの商談をこなすことの目的は、妄想の答え合わせを行うことと、妄想~答え合わせによるケーススタディを、より多く自分の引き出しの中に仕舞うことです。知識拡充と思考訓練という一人よがりになりがちな行為を、実際の場で答え合わせをすることで、記憶にとどめることができます。
受験生時代に行った一問一答をちょっとした訪問ごとに行うわけですね。そうすることで問題解決思考の質が上がり、ケーススタディが蓄積されるのです。
ここで再び数多く商談するという「行動力」をベースとした考え方が浮上してきます。BtoB営業における行動力格差は、単にたくさん訪問するという短絡的なものではなく、学習と思考がきちんと行われた上での行動を如何に数多く行えるかという点であることを声を大にして申し上げたいのです。単に根性論で客先に大量訪問しなさいという指示であってはなりません。
ビジネスにおける行動力格差は、人間の「行動するのが億劫である」という基本的な怠惰に付帯して、自分を如何に律する事ができるかというマインド面の格差であることは冒頭に述べました。そして、その行動力格差論の正当性も論述しました。その行動力が営業というシーンにおいても絶対的な存在であることはやはり覆せない事実のようです。
BtoB営業には数と質のどちらも大事と中編にて申し上げましたが、数と質の強化は平等に行うことが正しい訳ではないようです。なぜならば、数の強化が質の向上よってもたらされることはあまりありませんが、質は数をこなしケーススタディを積み上げることで確実に向上していくからです。とはいえ、基礎的な知識の拡充と思考の訓練がされていない人間がいくら数をこなしても、ことBtoBの営業領域においては意味がないことは言うまでもありません。
従って、行動量の確保と質の向上は3:1くらいの感覚で行っていくことが最適なのではないかと考える次第です。
行動力格差の時代、これは単独に存在しているのではなく、従来までの知識力や情報力をベースとして持ち、それらを活かすための『仮説力』を始めとした思考力をもって行動をするという意味で捉えるのが自然でしょう。
実に億劫なのですが、それしか人間が必要とされる領域がないというのが現実なのでしょうね。
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