【第31講座】法人間の取引の種類を紐解いて「管理顧客」を決める


2016年10月21日 (金)

法人取引の戦略を考えるに際し、最初に考えなければならない点は顧客の定義です。ビジネス市場には大きく3種類の取引パターンが存在し、それぞれに顧客の定義が異なります。自社が管理するべき「顧客」を把握し、誰を顧客として捉える必要があるのかをしっかり認識しなければなりません。

①法人エンドユーザーとの間の取引
②販売代理店やディーラー等との取引
③メーカーやゼネコン等に対しての設計指定を目指す取引

それぞれに顧客の定義は異なります。

①が最もシンプルでわかりやすく、エンドユーザーである法人が管理すべき顧客です。卸売業や法人向けの小売業はこのスタイルになります。

②は日本では非常に多いのですが、管理すべき顧客情報となると実に難しい。販売店を顧客と捉えるか、エンドユーザーを顧客と捉えるか。販売店内の売上管理や自社のシェアの管理は必要ですが、一方で、購入の意思決定はエンドユーザーです。エンドユーザー情報をしっかり販売店と共有しなければ、市場における自社の戦略を立てることが出来ません。従って、このパターンでは、チャネルとエンドユーザーの双方の情報を独自に管理する必要があります。チャネル任せではなく、エンドユーザーも独自に管理しなければなりません。

③はメーカー・ゼネコンより川上の部品や素材の産業にのみ存在します。こちらはメーカーやゼネコンごとの、製品・ブランド・建物等の切り口でお客様と認識します。例えばレクサス向け、六本木ヒルズ向け、○○ビル向け等が顧客の単位になります。

①・②・③、それぞれ営業担当者に求められる能力が大きく異なることはご存知でしょうか?

①は購入するお客様に対して、直接商品の価値や問題解決を提案するわけですから提案力が問われます。お客様に対してのプレゼン力や交渉力などを鍛えていくことが必要でしょう。

②は販売店にうまく入り込み、コントロールする手腕が最も問われます。調整力や忍耐力、素早く正確な処理能力などが求められます。

③は設計部門への提案になりますから、商品知識と技術力等の知識面が求められます。派手なプレゼンテーションよりも、細かい技術者の要望に幅広い知識で正確に詳細に地道に応えていくという能力が重要です。

実は法人営業と一言で言っても、業種や営業スタイルによって必要なリテラシーは随分と変わるのです。そのあたりを、管理者や人事担当などはよく理解した上で営業担当者たちの評価をしなければなりませんよ。一つの会社に複数の営業パターンが混在することもよくある話です。営業リテラシーをワンパターンで捉えていませんか?それぞれの特質を理解した上で適材適所をしっかりと考えていきましょう。