【第4講座】【連載コラム】新規事業に失敗しないために ②【新規事業の定義】


2013年06月20日 (木) default

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まず最初に考えたいことは、新規事業の定義についてである。世に新規事業と銘打つ事業はたくさんあるが、定義がかなりマチマチであり明確な定義がないように感じている。新規事業を論ずるに際し、仮にとはいえ本コラムにおける新規事業の定義を明確にしておきたい。

一般的に企業の成長戦略を語る際に必ず使われるフレームワークがアンゾフの製品市場マトリックスだろう。

 

アンゾフ

 

製品と市場の二軸、新規と既存の二軸を元に表を作り各々を「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」に分類するマトリックス。事業拡大の進むべき方向性を考えるに際して実にシンプルでわかりやすいフレームワークである。

 

さて、そこで新規事業を考えるのだが、市場浸透戦略のことは当然のことながら新規事業とは言わない。次の製品開発戦略に関しては複数の考え方があるだろう。既存事業のカテゴリー内の新製品開発は、日常から脱した新たなステージとは言わないため、新規事業とは言えないだろう。逆に想定顧客が全く異なる新製品開発は多角化戦略と同義になるのでこれは新規事業と言ってよい。では市場開拓を伴わない新製品開発戦略はどうだろうか。

 

ここで、アサヒビールを事例として考えてみよう。2007年ころに発売したカゴメとの共同開発商品の「トマーテ」。開発にはかなりの時間を要したとの現場の言もあるが、これは新規事業といえるだろうか?あるいは、先日発売されたスーパードライの黒ビールであるドライブラックを開発したケースはどうだろうか?トマーテの場合は、カゴメとのアライアンスと言う要素、野菜のカクテルというそれまでに手がけていないカテゴリーの製品開発、ターゲットとなる顧客セグメントがビールと大きく異なることを考えると新事業と言ってよいと考える。しかしドライブラックは、従来のスーパードライと比べてターゲットが大きく変わるわけではなく、流通も特に変更なく、他社の協力を仰いだという情報も出ていない。変更点は、素材とプロモーションだけである。従って、新事業というよりやはり新製品開発領域のチャレンジであると考えるのが正解であると考える。

 

上記アサヒビールの事例から考えると、新事業と考えられる新製品開拓の定義は、従来と異なるアライアンスパートナーとの事業展開、新しいカテゴリーの製品・サービスの開発による新しい顧客ターゲットの開拓、流通経路の大幅な変更を伴う新製品開発を指すと考えて良いのではないだろうか。平たく言うと戦略ドメイン上の「誰に」「何を」「どのように」の複数の要素について新しい取り組みを行う場合に新規事業であると一旦は定義可能である。

基本的には新規事業と言う存在は、その企業内のリーダーが新たな事業を興すと決めた時に発生し、企業内部で新規事業と定義づけられるため定義は主観的且つマチマチであると言わざるをえない。従って上記の新規事業の定義はあくまで当コラムの内部における筆者の定義と考えて頂きたい旨を最初に断っておく。