【第14講座】【連載コラム】新規事業に失敗しないために ⑦最終回【新規事業を立ちあげたい経営者の方へ】


2013年09月12日 (木) default

<「新規事業に失敗しないために」のまとめはこちら

 

新規事業を立ちあげたい経営者の方へ

 

新規事業を立ちあげるに際しての注意点をこれまで複数のケースに分けて上げてきた。新規事業の立ちあげコンサルタントとして、自らの体験やリサーチ・インタビュー・研究の結果を元ネタとしている。新規事業を自ら立ち上げようとしている経営者の方、新規事業の責任者に任命された方、その責任者に見込まれて選ばれたメンバーの方に向けてのメッセージとなっている。ご参考にして頂ければ幸いだ。また、新規事業に関して情報アップデートがあった際にはちょこちょこと追記をしていきたいとは考えている。

 

「新規事業に失敗しないため」にと題したコラムの連載は今回をもって一旦終了としたい。本来はポジティブ思考に則り、新規事業に成功するためにはどのようにすべきかと書きたい所ではあった。しかし冒頭にも述べたとおり、新規事業はその大多数が失敗の結末を迎えるため、まずは失敗のポイントを示し、その点を避ける事で生存の確率をあげられるのではないかと考えて、少々ネガティブな題名とした。

 

新規事業のリスクの多くはスキル面よりもマインド面に顕著に現れる。これは通常の業務をつつがなく遂行していれば良いと考える、「変化を恐れる」人間の基礎的な欲求に基づいている為、論理より実行面での不安が大きい。あるいは、閉塞感の打破や垂直立ち上げへの期待など、余計なプレッシャーや周囲のノイズによって発生する落とし穴もあるだろう。ステイクホルダーから与えられたり、自らが生み出してしまうメンタル面のノイズを避ける事で、まずは普通に努力すれば成功できるという土台に乗って頂きたいと思い、あえて最初に排除すべきリスクファクターをあげつらうことを本稿の方向性とした。

 

もし、ポジティブな新規事業の成功法則を聞きたいとお考えの読者の方は、来年1月に開催される予定の公開講座にお申込み頂きたい。詳しくは、決まり次第当ホームページに掲載する。

 

最後に、「撤退」についての思うところを記して結びとしたい。

 

残念ながら、様々なステイクホルダーによるノイズを避け、きちんとした事業計画書を作成し、ビジネスモデルを作りこみ、適切な人材を集めて始めた事業も、その多くは失敗するだろう。撤退ラインをあらかじめ決めておき、そのラインを超えた際には如何にソフトランディングを行いつつ、傷口を最小限にとどめた撤退が出来るかが極めて重要となる。

いわば、株式相場に身をおいた際の「損切り」概念と同じと言える。いかにもったいないと思う気持ちを断ち切ることが出来るかという点が意思決定者にのしかかる。

 

しかし撤退に関しては、機械的に行ってはならない。撤退ラインが近くなってくると、往々にしてメンバーには焦燥や心配の様子見られるようになり、浮足立ってくる。中にはあきらめモードで完全に士気が下がっている場合もあるが、なんとか少しでも形になるところにまで持って行っている場合には、なんとか事業を残そうと頑張るだろう。

 

撤退のジャッジは、現場の担当者達の士気と活動を詳細確認した上で決めるべきだ。本当にあともう少しで形になるのか、それとも完全に死に体のものを取り繕っているのかは現場に聞かないとわからない。

 

そして、もう一つ絶対に忘れてはならないことがある。新規事業に携わった人間たちの処遇についてだ。

 

私自身が、新規事業へのチャレンジを促された際に、同じく声を掛けられた人物もいたが、その内の多くが現行の職務から離れて新規事業にチャレンジすることを拒んだという事実がある。

 

その中の一人との会話の中で実に残念な理由が挙げられたのだ。

「この新規事業は極めて難しい案件だから成功確率は低い。そして、もし失敗した場合に、現在のポジションに戻れるかどうかの保証は全くない。新規事業は大変なエネルギーを使うにもかかわらず、成功率は低く、且つ失敗した場合の処遇にも不安が多い。だから私は現在の仕事を離れるつもりがない。」という内容だった。

 

失敗した場合に、チャレンジ前と同様のポジションを保証すること。そして成功した場合には成功の果実の一部は与えられること。

 

この2つがないと、あえて道無き道にチャレンジすることへのインセンティブは働かない。私のように、他人の作ったレールに素直に乗ることが好きではない「イバラの道」好きは、どうも世の中ではマイノリティで、通常は新たな事業へのチャレンジ障壁は相当に高いものらしい。

 

確かに、多大な投資により企業のキャッシュ・フローが一時的に厳しくなったために、全社的な労働分配率の低下、すなわちボーナスの減額などが行われるようだと新規事業はやり玉にあげられる。

心無い人は、「あの新規事業のせいで我々儲かっている部署のボーナスまでカットされた」などとのたまうこともあるだろう。他人の敷いた道の上をつつがなく進むのと、道無き道を進むことを、同じテーブルの上で議論する事は100m走と競歩を比較するような愚かな行為であるにもかかわらずだ。極めて残念なことではあるが、これもある種の宿命なのだろうと諦めるしかない。「やられたら倍返しだ!」を目指して結果を出すための糧にするのが健全な思考と言えるだろう。

 

成功率が低く、ストレスフルで、誰もゴールを示してくれない新規事業へのチャレンジには、アップorアウトの条件では誰もチャレンジしなくなり、せめてアップorステイを経営者や事業オーナーの口から明示することで、後塵のうれいなくチャレンジできるというものだ。その点が未整備な状況で新規事業、新規事業とおっしゃっている経営者は、まず戦えるフィールドを与える前に、チャレンジする為の発射台を堅固なものにすることをおすすめしたい。それが、人事的な処遇の明確化である。

 

 

 

ユニクロの柳井社長が以前あるインタビューで「新規事業は1勝9敗で良い。1あたれば元をとれる」とおっしゃっていた。イギリス進出の失敗、農業参入の失敗など様々な失敗を経験された上で、引き続き事業規模を拡大し続けてきた柳井社長ならではの言葉の重みがある。現在、GUなどの新規事業に引き続きチャレンジをしている。本当にスゴイ方だ。

 

本稿の冒頭に書いたとおり、新規事業の多くは失敗する。しかし、新規事業に挑戦しない企業には継続的な繁栄はない。未来永劫繁栄を続ける事業は絶対にないからだ。

 

そのことを忘れず、一つでも多くの新規事業が世に生まれることを期待したい。私自身も新規事業コンサルタントとして、微力ながらも尽力したいと考えている。

 

新規事業を任せられる人物がいない・採用できない・現存戦力では不安だ、後継者にチャレンジさせたいが大丈夫か、どういう新規事業を生み出すべきなのかがわからない、参謀がほしい。そういった方は是非お問い合わせ頂きたい。新規事業責任者と2人3脚で徹底して取り組み、なんとしてでも形にするコンサルタントであり続けたい。

新規事業開発コンサルタント 小倉正嗣