【第16講座】ビジネスにおける行動力格差(中編)


2013年09月16日 (月) Phone

【ビジネスにおける行動力格差〈前編〉はこちら

 

本稿では、前稿の内容をもう少しブレイクダウンして、私の専門である営業活動における営業マンの行動力格差について論じてみようと思います。

 

営業の行動格差は見込み顧客リストを作るためのアプローチ件数格差です。営業マンに限らず、全ての営業活動は見込み顧客の数を極大化することを目指すべきと考えます。

 

例えば、見込み顧客数が500人でクローズ率が40%の場合と、見込み顧客が300人でクローズ率が50%の場合を考えてみましょう。極めて単純な計算で、顧客になってくれる数は前者が200人、後者が150人となるのは誰が見ても明確です。通常、質において数十%の差をつけるということは実に難しい数字ですが、アプローチ顧客数を1.5倍にすることは、訪問数やアプローチ数を1.5倍にすることを意識すれば必ず達成可能です。

 

もう一つ明確なことは、クローズ率は百分率ですから100%を超えることはありません。繰り返しになりますが、どれだけ研鑽しても100%を越えるクローズ率はありえません。今回の場合で言うと50%のクローズ率はどう頑張っても2倍の100%以上になることはないのです。しかも、全ての見込み客をクローズするというのも現実的ではありませんから、実際のクローズ率はどんな営業でも一定の確率に収束されるはずです。

 

すなわち、顧客へのアプローチ数は、努力と根性と効率化により極大化出来ますが、クローズ率は一定以上のところで必ず頭打ちするということです。したがって、まずは訪問件数を極大化することを目指して努力と根性で2倍の行動を取ることが、目標達成のために必ず必要となります。

 

と、多くの営業コンサルタントが声高に主張されているようですね。私が営業マンだった頃に最も嫌っていたいわゆる「根性論」です。

 

しかし、現在は広義で言うと同じ営業コンサルタントという職業についていますので、一定数の数をやり続けるということの重要性はきちんと理解しています。ただし、それはある条件をつけての場合になりますが。

 

その条件というのは、数の論理で営業活動を捉えるべきなのは、1つ目に見込み顧客が無尽蔵と言ってよい生命保険や車などの個人向け営業です。訪問すべきお客様の数が訪問しきれないくらい多い場合においては数の極大化を目指すことで売上が比例して伸びていきます。
 
2つ目は、これまたものすごい量が存在する商店やショップに対して消耗品や広告など、どこの組織でも使われるようなものを販売する場合です。この業界の代表的な営業活動といえばリクルート社の営業ですね。彼らは飛び込みで商店をまわり、見込み顧客の極大化を目指しています。その活動方針は間違ってはいないと思います。
こういった業態の営業は、ひたすら分母となる見込み顧客を増やすために、体力に任せて電話アポイントや飛び込み訪問をするべきなのかもしれません。質はともかく、アプローチ数を増やすことで絶対的な見込み顧客数を増やすことができるからです。

 

ただ、広義では営業コンサルタントとはいえ、狭義ではBtoBを主戦場にしている私から考えると、そのように短絡的な数の理論で売上が上がるとは思っておりません。

 

BtoBの場合は、必ずターゲットとなる業界が有ります。そのターゲット業界内のターゲット顧客の数には限界があります。例えば、自動車のワイヤーハーネスを作っている会社の見込み顧客は無尽蔵に増えるでしょうか?見込み顧客の数を増やすことで売上が上がるでしょうか?大規模流通業向けのWMSのシステムを販売している会社のターゲットは無尽蔵にあるでしょうか?おそらくはある程度数に限りがあると思います。

 

また、BtoBの営業を行っている企業では、明確に担当者ごとに顧客を割り振っているケースが多くなっています。 限られた数の担当顧客を割り振られた営業マンに、アプローチする顧客数や訪問数を極大化しろなどという短絡的な指示やコンサルティングを行うのは愚の骨頂でしょう。

 

BtoBの営業活動においては、必ず数の増加と質の向上は両軸で進めなければなりません。当然決まった数のお客様の中で、足繁く通うことに価値を感じてくれるお客様もいるでしょう。したがって、一定数の訪問は担保しなければならない。とはいえ、だからといって2倍訪問したから売上が2倍になるということは少々考えにくいのですが。

 

2倍にするには、質を上げることにも重点を置かなければなりません。BtoBの場合は、決まった数の顧客から限られた数の案件が発生し、専門の購買担当者に対して質の高いアプローチをする必要があります。なぜならば、予算は無尽蔵ではなく、買う側もその道のプロなので、生半可な知識では相手にしてもらえないからです。無尽蔵に顧客を増やすことのできる個人向けのセールスとはそもそものところで存立条件が異なっているのです。

 

結論として、営業マンの行動力格差を考えるに際しては、座学やOff-JTなどで、きちんと営業やマーケティング、購買や財務などの知識を入れてプロである相手を納得させるスキルを身につけることが格差になるのです。

 

このように考えてみると、BtoBの領域の営業活動に現れるのは、行動力格差だけでなく知識力格差の側面もありますね。1990年代に逆戻りするように見えます。

後編に続く>